「合わないこと」は設計で調整
近年は、サザエさん一家のように親世帯と子世帯が完全に同居するかたちの二世帯住宅は少なくなっています。家の一部をリフォームして居住空間を分離する、「プチ分離」が手軽にできるからです。
「同居型」で失敗するケースのほとんどは、次第に一つ屋根の下で暮らすことが嫌になったという理由が多いそうです。特に、親世帯と子世帯が終日同じ空間で過ごす家ほど、時間とともにお互いを疎ましく感じる傾向があるようです。
そもそもはお互いに有益になることが多いから同居を考えたのでしょう。双方とも、 「連帯しながらも、単独でありたい」 「つながりながらも、離れていたい」 という両面を求めています。これを満足させるのが、設計の役割といえます。
どのような二世帯住宅にするか、十分に話し合い、設計にも時間をかける必要があります。必ず両者の間に設計者が入り、十分に話しを聞き取ることで、双方の「合わないこと」をあぶり出す必要があります。そのうえで同居の可能性を探っていくのが、成功する二世帯住宅の第一歩といえるでしょう。
暮らし方の心構えとルールづくり
二世帯住宅の設計は、ハードとソフトの両面から検討を重ねていく必要があります。ハードとは建築物としてどのような設計にするか、ソフトとは一緒に住む家族間でどのようなルールをつくるかです。
設計で注意したいことの1つは、生活音の伝播です。さらに、互いに不可侵の領域をどこにどのように設けるか、これを考える必要があります。これらを怠ると心理的に安息のない生活が続いてしまいます。ここには、出入りに気を使わないで済む玄関の配置も含まれます。
家族間のルールについては、光熱費の負担や清掃などの役割分担、浴室の利用時間などのルールづくりも必ず考えなくてはなりません。ドアをノックするなどの簡単なルールも意外と重要になってくるのです。